観測型FAQ研究
窓口で3割を払う地域では、子どもの受診を控える家庭が多いと報告されていますか?
- 回答の要約
- 多いという報告があります。東京都・長野県・広島県のふたり親で生活保護を受けていない世帯の中学2年生では、3割負担と償還払いの自治体で0円の自治体の約2倍とする研究があります。北海道では一部の地域・学年で助成ができた後に割合が下がった例がありますが、2時点の比較で助成以外の変化と分けていません。どちらも保護者の回答で、控えた受診が必要だったかや健康への影響は測っていません。
中学2年生では、3割負担と償還払いの自治体で、0円の自治体と比べて受診控えが約2倍と報告されています
東京都・長野県・広島県の子どもの生活実態調査を統合し、小学5年生と中学2年生のふたり親で生活保護を受けていない世帯を分析した研究は、中学2年生では、窓口で3割を払う自治体と償還払いの自治体に住む場合、0円の自治体に比べて「受診させた方がよいと思ったが受診させなかった」経験が約2倍の確率で起きていたと報告しています。経済的に厳しい層では関連がさらに大きかったと報告しています。小学5年生では経済的に厳しい層だけに関連が見られ、償還払いは理由が「多忙」の場合だけ関連し、定額の負担では一貫した結果が得られなかったと報告しています。
北海道では、助成ができた後に受診控えの割合が下がった例が報告されています
北海道の14市町村で2016年と2021年に行われた調査を比べた研究は、通院の助成が新しくできた地域・学年で受診控えの割合が下がった例を報告しています。札幌市の小学2年生では19.4%から14.0%へ下がりました。2時点の割合の比較で、2021年は新型コロナの流行期にあたり、助成ができたこととその時期のほかの変化を分けた推定ではありません。
自己負担がないときの受診の増え方は、所得の高い世帯で大きかったという報告もあります
全国の請求データで助成が終わる年齢の前後を比べた研究は、自己負担がないことと関連した外来の受診日数の増え方は、世帯所得の高い子ども(年5.96日)の方が低い子ども(年2.64日)より大きかったと報告しています。受診控えの調査とは測っているものが違い、所得の低い世帯ほど助成で受診が増えるとは、この研究からは読めません。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 子どもの医療費助成制度の受診抑制に対する影響-大規模自治体データを用いた実証研究-阿部彩、梶原豪人、川口遼(2021) | 東京都・長野県・広島県が実施した子どもの生活実態調査を統合したデータのうち、小学5年生と中学2年生のふたり親・生活保護を受けていない世帯 | 中学2年生で、3割負担と償還払いの自治体の受診控えが約2倍とした調査 |
| 子どもの医療費助成と受診抑制陳勝(2024) | 北海道の14市町村で2016年と2021年に実施された子どもの生活実態調査(小学2年・5年、中学2年、高校2年の保護者の回答) | 北海道で助成ができた後に受診控えの割合が下がった例 |
| 小児医療の自己負担がないことが世帯所得別の医療の利用に与える影響 回帰不連続デザインShingo Fukuma、Hirotaka Kato、Reo Takaku、Yusuke Tsugawa(2023) | 全国の診療報酬請求データベースの20歳未満の子ども(2018年4月〜2022年3月)。自己負担が0から3割へ上がる年齢(地域により6〜20歳)の前後にいる49,556人を分析 | 受診の増え方が所得の高い世帯で大きかった請求データの分析 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 受診控えは保護者の回答で、控えた受診が必要だったかや健康への影響は測っていません。3都県の調査はふたり親で生活保護を受けていない世帯の自治体どうしの比較、北海道の調査は新型コロナの流行期を含む2時点の比較で、地域の医療機関の数や保護者の働き方など、助成以外の違いを取り除き切れていない可能性があります。所得別の受診日数の結果は助成が終わる年齢の前後に限った比較で、助成の対象年齢を上げたときの効果と同じではなく、期間の後半は新型コロナの流行期と重なります。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究3件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 子ども医療費の払い戻しは、いったん払ったあと市区町村へ申請します「市区町村名 医療費 払い戻し」「償還払い」「県外」で探すときに、対象になりやすい場面・必要書類の例・保険者への先手続き・期限の確認順をまとめます。
- 子ども医療費助成で受診が増えることと、子どもが健康になることは別の問い子ども医療費の助成が広がったとき、受診、受診の中身、入院や健康、受診控え、親の負担について日本の研究が何を報告しているかを、研究ごとの対象と限界とあわせて整理します。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。