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観測型FAQ研究

学童保育を利用しやすいほど、母親の就業は増えると報告されていますか?

回答の要約
報告は一様ではありません。東京都の市区町村の研究は、5〜10歳人口当たりの学童保育の定員比率が増えると、35〜44歳の女性(子育て中かを区別しない)の就業率が上がったと報告しています。日本の母親を追った研究では、学童保育の利用は働く確率に有意な影響がなく、正規雇用の確率と労働時間には有意に正の影響がありました。スイスの研究は、親の就業全体には影響がみられず、母親のフルタイム就業には正の影響があったと報告しています。

東京都の市区町村では、定員比率の増加と35〜44歳女性の就業率上昇が報告されています

1985〜2010年(5年ごと)の東京都の市区町村集計データを使った研究は、所得、親との同居率、保育所の利用可能性などを考慮しても、5〜10歳人口当たりの学童保育の定員比率が増えると、35〜39歳と40〜44歳の女性の就業率が有意に上がったと報告しています。子育て中かどうかを区別しない、年齢階級ごとの女性の就業率です。

個人の追跡では、働く確率に有意な差はみられず、正規雇用と労働時間に有意に正の影響がみられました

「消費生活に関するパネル調査」の母親を使った研究は、学童保育を利用しても母親が働く確率には有意な差がなかった一方、正規雇用の確率と労働時間には有意に正の影響があったと報告しています。正規雇用の確率と労働時間への影響は、小学校入学前から働いていた母親で大きかったとしています。

スイスでは、親の就業全体には影響がみられず、母親のフルタイム就業に正の影響がありました

スイスの2010年の国勢調査を使い、州ごとの放課後保育の規定の違いを州境の近くで比べた研究は、放課後保育の提供が親の就業全体には影響しなかった一方、母親がフルタイムで働くことには正の影響があったと報告しています。

この回答が参照した研究

研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。

研究 標本 この問いでの用い方
学童保育の拡大が女性の就業率に与える影響平河茉璃絵、浅田義久(2018) 1985〜2010年(5年ごと)の東京都の市区町村集計データ。年齢階級別の女性の就業率と、5〜10歳人口1人当たりの学童保育の定員比率 東京都の市区町村単位で、定員比率と年齢階級別の女性就業率
認可保育所と学童保育が母親の就業に与える影響中山真緒(2021) 「消費生活に関するパネル調査」の母親(慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターのディスカッションペーパー DP2021-006) 個人の追跡で、就業確率は差なし、正規雇用と労働時間は正
放課後保育と親の就業Christina Felfe、Michael Lechner、Petra Thiemann(2016) スイスの2010年の国勢調査の個票。州(カントン)ごとの放課後保育の規定の違いを使い、州境に近い地域に限って比較 スイスの州の制度差で、全体は差なし、母親のフルタイムは正

この回答で分からないこと

限界
研究ごとに比べているものが違います。東京都の研究は1985〜2010年の市区町村の平均で、子育て中かを区別しない年齢階級の女性の就業率であり、学童保育を利用した個々の母親の変化ではありません。日本の個人データの研究は査読前のディスカッションペーパーで、標本期間は要旨に書かれておらず、利用するかどうかは家庭が選ぶため、地域の定員や待機児童数の違いが就業に与える影響を示したものではありません。スイスの研究は2010年の州の制度差による推定で、日本の学童保育の開所時間や費用の違いを調べたものではありません。
出典の層
一次資料を確認した研究3件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。