観測型FAQ研究
2020年4月に授業料等減免と給付型奨学金の拡充を行う修学支援新制度が始まってから、低所得世帯の子どもの進学は増えたと報告されていますか?
- 回答の要約
- 国の縦断調査で、新制度の直前に高校を卒業した1月生まれと開始年度に進学時期を迎えた7月生まれを比べた分析では、世帯年収210万〜370万円の層で7月生まれの高等教育進学率が9.2ポイント高く、210万円以下の層では有意な差はみられていません。別の保護者調査は、進学率の増減を直接推定したものではなく、世帯収入による進路の差は縮まっていないと報告しています。
新制度の境目の学年を比べると、年収210万〜370万円の層で7月生まれの進学率が1月生まれより高い結果でした
2001年生まれの子どもを追う国の縦断調査で、新制度の開始直前に高校を卒業した1月生まれと、開始年度に進学時期を迎えた7月生まれを比べた分析があります。世帯年収210万〜370万円の層では、7月生まれの高等教育進学率が9.2ポイント高く、学力や親の学歴などを考慮しても差が残りました。一方、210万円以下の層では有意な差はみられませんでした。
進学した7月生まれでは、給付型奨学金の受給率が5割前後でした
同じ分析では、新制度の対象になった7月生まれのうち進学した人の給付型奨学金の受給率は、210万円以下と210万〜370万円の両層で5割前後でした。貸与型奨学金の受給率や借入額がどう変わったかは、今回確認した範囲には含まれていません。
2021年12月の保護者調査では、収入による進路の差は縮まっていませんでした
国立教育政策研究所が全国の全日制高校など700校の3年生の保護者に行った2021年12月の調査(有効回答4,930人。2022年3月に追加調査)では、給付型奨学金の受給が内定した人の約半数が、奨学金なしでは進学が「非常に困難」と答えていました。その一方で、世帯収入や子どもの数による高校卒業後の進路の差は縮まっていないと報告されています。貸与型奨学金を避ける動きも確認されています。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)特別報告文部科学省、浜銀総合研究所(2023) | 2001年に生まれた子どもを追う全国の縦断調査のうち、修学支援新制度の開始直前に高校を卒業した1月生まれと、開始年度に進学した7月生まれの比較(文部科学省の調査研究として浜銀総合研究所が分析) | 新制度の境目の学年を生まれ月で比べ、年収210万〜370万円の層で7月生まれの進学率が高かったと報告 |
| 高校生の高等教育進学動向に関する調査研究 第二次報告書濱中 義隆、小林 雅之、吉田 香奈、朴澤 泰男、岩田 弘三、日下田 岳史(2023) | 全国の全日制高校など700校の3年生の保護者を対象にした2021年12月の調査(有効回答4,930人)と、2022年3月の追加調査(1,164人) | 給付内定者の多くが奨学金なしの進学を困難とする一方、収入による進路差は縮まっていないと報告 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 縦断調査の分析は生まれ月の違いを制度の有無の代理として使う1学年ずつの対比で、新制度の因果効果を識別したものではなく、世帯年収は調査の回答による目安のため実際の支援区分とは一致せず、進学後の在学継続や卒業後の就業は扱っていません。保護者調査は希望・予定の進路への回答で、回答率は2割に満たず、定時制・通信制の高校を含まず、制度がなかった場合と比べた進学率の差を直接推定したものではありません。個別の家庭が支援の対象になるか、進学できるかは、この結果からは分かりません。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究2件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 自治体の奨学金返還支援は対象と金額と条件の順で確かめます自治体の奨学金返還支援は、対象となる奨学金、支援総額と年数、住まいと仕事の条件の順に確かめます。実際の制度例をもとに要綱の読み方を整理して解説します。
- 奨学金と進学・中退・卒業後の暮らしの関係は、どこまで調べられているか給付型と貸与型の奨学金について、進学、在学中の中退、卒業後の暮らしに分けて、研究と国の統計が報告している範囲を整理します。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。