研究検証台帳
子どもは無料で? 患者の自己負担と医療の利用
Toshiaki Iizuka、Hitoshi Shigeoka(2018年)
書誌と確認の記録
- 資料の種別
- 著者版
- DOI
- 10.3386/w25306
- 確認日
標本
大企業の健康保険組合の診療報酬請求データ(2005年4月〜2015年3月)のうち、市区町村の助成が年齢と時期で切り替わった7〜14歳の子ども
報告
窓口負担が3割から0円になると、月に1回以上外来を受診する確率が6〜8ポイント(助成なしの平均32%に対して19〜25%)上がり、外来の医療費は22〜31%増えたと報告した。増えた受診によって回避可能とされる入院は減らず、短中期の健康の改善も見られなかった一方、不適切な抗菌薬の使用と時間外受診は増えたと報告した。
限界
- 一般化できない範囲
- 親が大企業に勤める世帯の子どもで、所得がとても低い世帯は含まれない。7〜14歳、2005〜2015年の結果で、未就学児や現在の制度へそのまま当てはめられない。同じ著者の2022年の論文と同じデータを使っており、独立した追試ではない。
この研究を参照するページ
- 子ども医療費の窓口負担が0円になると、子どもの通院は増えると報告されていますか?確認した日本の研究では、増えるという報告で方向がそろっています。ただし同じデータや同じ研究グループによる結果を含み、独立に確かめた研究の数とは読めません。ちょうど0円になると、少額の負担が残る場合より受診が段差をもって増えたとする研究もあります。増え方の大きさは子どもの年齢、データの時期、比べた負担の差で異なり、どの自治体でも同じだけ増えるという予測にはなりません。
- 子ども医療費の助成で増えた受診には、時間外の受診や抗菌薬の処方が含まれると報告されていますか?時間外受診は、助成があると多い方向で報告がそろっています。窓口負担が0円で増えたとする2005〜2015年の研究と、助成の対象から外れると年0.14回減ったとする2018〜2023年度の報告です。抗菌薬は、不適切な使用が増えたとする研究と、処方回数に有意な変化を確認しなかった報告とに分かれています。いずれも日本の請求データの結果で、個々の受診が必要だったかは判定していません。
- 子ども医療費の助成が広がると、子どもの入院が減るなど、健康の改善が報告されていますか?確認した日本の研究では、入院全体の減少は確認されず、健康の改善は一部に限って報告されています。未就学児の主観的な健康との関連(学齢児では見られず)と、1990年代の都市部33市区町村の0〜6歳で保護者が答える症状の減少と1歳未満に限った転帰・死亡率の改善です。市区町村ごとに集計した入院件数の研究は、全体では有意な変化がなく、所得の低い地域で減り高い地域で増えたとしています。
- 通院の助成の対象年齢が高い自治体で育つと、大人になってからの健康がよくなると研究で示されていますか?今回確認した研究からは示されていません。確認できた日本の研究はどれも子ども時代の受診、入院、症状などを見たもので、同じ子どもを成人後まで追い、対象年齢が高い自治体で育ったことと大人になってからの健康を比べた研究は、そのなかにありませんでした。
- 子ども医療費助成で受診が増えることと、子どもが健康になることは別の問い子ども医療費の助成が広がったとき、受診、受診の中身、入院や健康、受診控え、親の負担について日本の研究が何を報告しているかを、研究ごとの対象と限界とあわせて整理します。
- 研究検証台帳の一覧登録済みの研究を標本・報告・一次資料で並べています。