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観測型FAQ研究

子ども医療費の窓口負担が0円になると、子どもの通院は増えると報告されていますか?

回答の要約
確認した日本の研究では、増えるという報告で方向がそろっています。ただし同じデータや同じ研究グループによる結果を含み、独立に確かめた研究の数とは読めません。ちょうど0円になると、少額の負担が残る場合より受診が段差をもって増えたとする研究もあります。増え方の大きさは子どもの年齢、データの時期、比べた負担の差で異なり、どの自治体でも同じだけ増えるという予測にはなりません。

3割から0円になると、月に1回以上受診する確率が上がったと報告されています

大企業の健康保険組合の請求データ(2005〜2015年)で7〜14歳の子どもを見た研究は、窓口負担が3割から0円になると、月に1回以上外来を受診する確率が6〜8ポイント上がり、外来の医療費は22〜31%増えたと報告しています。

ちょうど0円になると、少額の負担が残る場合より受診が段差をもって増えたと報告されています

同じ請求データを使った同じ著者の別の論文は、窓口負担がちょうど0円になると、少額でも負担が残る場合と比べて受診が段差をもって増え、0円は比較的健康な子どもの利用を増やしたと報告しています。1回あたり2米ドル程度の少額の負担は、主に健康で受診の多い子どもの利用を減らし、病気がちな子どもの受診は大きく妨げなかったと報告しています。

助成が終わる年齢の前後でも、外来の受診日数の差が報告されています

全国の請求データ(2018年4月〜2022年3月)で、自己負担が0から3割へ上がる年齢の前後にいる子どもを比べた研究は、自己負担がないことが外来の受診日数の年5.26日の増加と関連したと報告しています。同じ研究代表者による厚生労働科学研究の報告(2018〜2023年度)は、助成の対象から外れると外来の受診日数が年1.04日減ったと報告しています。2本は同じ研究代表者が同種のデータで、助成が終わる年齢の前後に限って比べたもので、独立した追試ではありません。標本も比べている変化も同じではないため、2つの日数を1つの幅として読むことはできません。

小学4年生で対象から外れた子どもでは、外来の利用が減ったと報告されています

都市部の国民健康保険に加入する小学2〜4年生2,896人(2012〜2014年)を見た研究は、4年生への進級で助成の対象から外れると外来の利用が減り、減り方は軽い病気や慢性の病気で大きかったと報告しています。入院の利用は増えましたが、健康の悪化ではなく外来から入院への置き換えによるものと報告しています。

未就学児でも、外来の利用の増加が報告されています

北海道の1市の国民健康保険に加入する3〜6歳児を見た研究は、2004年10月の制度変更で住民税非課税世帯の子どもは0円、それ以外の世帯の子どもは1割負担になった差を使い、負担が低いほど外来の利用が多い方向の結果を報告しています。負担が1%高いと外来の利用が約0.23%少ない、という推定(価格弾力性-0.23)です。1990年代に助成を導入・拡大した人口の比較的多い33市区町村(都市部)の0〜6歳児を見た研究は、助成の短期の影響として、外来の再来患者数と月々の医療費が増えるなど、外来の利用が増えたと報告しています。

この回答が参照した研究

研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。

研究 標本 この問いでの用い方
子どもは無料で? 患者の自己負担と医療の利用Toshiaki Iizuka、Hitoshi Shigeoka(2018) 大企業の健康保険組合の診療報酬請求データ(2005年4月〜2015年3月)のうち、市区町村の助成が年齢と時期で切り替わった7〜14歳の子ども 7〜14歳で、3割から0円になったときの受診確率と医療費の増加
0円は特別な価格か 子どもの医療からの証拠Toshiaki Iizuka、Hitoshi Shigeoka(2022) 大企業の健康保険組合の診療報酬請求データ(2005年4月〜2015年3月)のうち、市区町村の助成が0円・少額の定額・定率の負担で異なった7〜14歳の子ども 同じデータで、0円と少額の負担の差を子どもの健康状態別に見た分析
小児医療の自己負担がないことが世帯所得別の医療の利用に与える影響 回帰不連続デザインShingo Fukuma、Hirotaka Kato、Reo Takaku、Yusuke Tsugawa(2023) 全国の診療報酬請求データベースの20歳未満の子ども(2018年4月〜2022年3月)。自己負担が0から3割へ上がる年齢(地域により6〜20歳)の前後にいる49,556人を分析 助成が終わる年齢の前後での外来受診日数の差
小児医療費無償化が医療利用と健康アウトカムに与える影響:因果効果と異質性の評価福間真悟(2025) 全国規模の保険者データの子ども454,934人(2018〜2023年度)。自治体ごとの助成の基準となる生年月日の前後を比較 2018〜2023年度の保険者データで、対象から外れたときの受診日数の減少
医療費助成の対象から外れることが子どもの受診に与える影響 差の差分析Atsushi Miyawaki、Haruko Noguchi、Yasuki Kobayashi(2017) 都市部の国民健康保険に加入する小学2〜4年生2,896人の診療報酬請求データ(2012年4月〜2014年3月、69,504人月) 小学4年生で対象から外れたときの外来の減少と、病気による違い
所得の低い世帯の子どもにおける患者の自己負担と医療の利用Reo Takaku(2017) 北海道の1市の国民健康保険に加入する3〜6歳の子どもの月次データ(2004年10月の制度変更の前後) 北海道の1市の未就学児で、0円と1割負担の差から推定した弾力性
無料の医療は子どもの受診と健康を改善するか 未就学児の医療費助成からの証拠Cheolmin Kang、Akira Kawamura、Haruko Noguchi(2022) 1990年代に助成を導入・拡大した人口の比較的多い33市区町村の0〜6歳児について、議会の議事録から集めた助成状況と全国を代表する4つの個票データを結び付けたデータ 1990年代の都市部33市区町村の0〜6歳児で、外来の利用の増加

この回答で分からないこと

限界
データは大企業の健康保険組合(所得がとても低い世帯を含まない)、国民健康保険、全国の保険者データと研究ごとに違い、7〜14歳・2005〜2015年の結果は未就学児や現在の制度へそのまま当てはめられません。同じデータや同じ研究代表者の結果は、方向がそろっても独立した確認の数としては数えられません。助成が終わる年齢の前後の比較は対象年齢を上げたときの効果と、小学4年生で対象から外れた直後2年間の研究は助成を始めたときの効果と同じではありません。2023年の論文は期間の後半が新型コロナの流行期と重なり、2025年の報告は査読を経ていない総括研究報告書、33市区町村の研究は2019年の作業論文版によるもので掲載版と細部が異なる場合があり、受診が増えたことはそれだけで健康がよくなったことを意味しません。
出典の層
一次資料を確認した研究7件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。