観測型FAQ研究
子ども医療費の助成で増えた受診には、時間外の受診や抗菌薬の処方が含まれると報告されていますか?
- 回答の要約
- 時間外受診は、助成があると多い方向で報告がそろっています。窓口負担が0円で増えたとする2005〜2015年の研究と、助成の対象から外れると年0.14回減ったとする2018〜2023年度の報告です。抗菌薬は、不適切な使用が増えたとする研究と、処方回数に有意な変化を確認しなかった報告とに分かれています。いずれも日本の請求データの結果で、個々の受診が必要だったかは判定していません。
2005〜2015年の請求データでは、時間外受診と不適切な抗菌薬の使用の増加が報告されています
大企業の健康保険組合の請求データで7〜14歳の子どもを見た研究は、窓口負担が0円になったことで増えた利用は、回避可能とされる入院を減らさず、時間外受診と不適切な抗菌薬の使用を増やしたと報告しています。同じ著者の別の論文も、0円が不適切な抗菌薬の使用を増やしたと報告しています。2本は同じデータを使っています。
2018〜2023年度の保険者データでは、対象から外れると時間外受診が減り、抗生物質の処方回数の変化は有意ではありませんでした
全国規模の保険者データで助成が終わる年齢の前後を比べた厚生労働科学研究の報告は、対象から外れると時間外受診が年0.14回減り、抗アレルギー薬と気管支喘息の薬の処方も減ったと報告しています。一方、抗生物質の処方回数の変化は統計的に有意ではありませんでした。
対象から外れたときの外来の減り方は、軽い病気や慢性の病気で大きかったと報告されています
都市部の国民健康保険に加入する小学生を見た研究は、小学4年生で助成の対象から外れると、外来の利用が全体として減り、減り方は軽い病気や慢性の病気で大きかったと報告しています。入院の利用は増えましたが、著者は健康の悪化ではなく外来から入院への置き換えによるものと報告しています。ある県の請求データの研究は、薬の自己負担をなくすと処方薬の支出が全体で116%、健康状態のよい子どもで121%に増え、健康状態のよくない子どもでは増えなかったと報告しています。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 子どもは無料で? 患者の自己負担と医療の利用Toshiaki Iizuka、Hitoshi Shigeoka(2018) | 大企業の健康保険組合の診療報酬請求データ(2005年4月〜2015年3月)のうち、市区町村の助成が年齢と時期で切り替わった7〜14歳の子ども | 時間外受診と不適切な抗菌薬の使用が増えたという報告 |
| 0円は特別な価格か 子どもの医療からの証拠Toshiaki Iizuka、Hitoshi Shigeoka(2022) | 大企業の健康保険組合の診療報酬請求データ(2005年4月〜2015年3月)のうち、市区町村の助成が0円・少額の定額・定率の負担で異なった7〜14歳の子ども | 同じデータで、0円が不適切な抗菌薬の使用を増やしたという報告 |
| 小児医療費無償化が医療利用と健康アウトカムに与える影響:因果効果と異質性の評価福間真悟(2025) | 全国規模の保険者データの子ども454,934人(2018〜2023年度)。自治体ごとの助成の基準となる生年月日の前後を比較 | 対象から外れると時間外受診が減り、抗生物質の処方回数の変化は有意でなかった報告 |
| 医療費助成の対象から外れることが子どもの受診に与える影響 差の差分析Atsushi Miyawaki、Haruko Noguchi、Yasuki Kobayashi(2017) | 都市部の国民健康保険に加入する小学2〜4年生2,896人の診療報酬請求データ(2012年4月〜2014年3月、69,504人月) | 外来の減り方が軽い病気や慢性の病気で大きく、入院の増加は外来からの置き換えとした報告 |
| 医療費助成が小中学生の医療の利用に与える影響 地域の自然実験Atsushi Miyawaki、Yasuki Kobayashi(2019) | ある県で助成が拡大された前後の、国民健康保険に加入する子どもの診療報酬請求データ(2013年4月〜2017年1月) | 薬の無料化で処方薬の支出が健康状態のよい子どもで増え、よくない子どもでは増えなかった報告 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 「不適切」「軽い病気」は研究ごとの定義で、個々の受診が必要だったかを判定したものではなく、抗菌薬の結果は対象年齢、時期、測り方が違うため一方へまとめられません。2005〜2015年の2本は大企業の健康保険組合の7〜14歳の同じデータで、所得がとても低い世帯を含まず、未就学児や現在の制度へそのまま当てはめられず、独立した追試でもありません。2018〜2023年度の報告は助成が終わる年齢の前後の比較で、学術誌の査読を経ていない総括研究報告書です。小学生の研究は1つの都市部で対象から外れた直後の2年間の結果で、助成を始めたときの変化や上の年齢への効果は分からず、薬の研究は1つの県の国民健康保険の結果で健康が変わったかを扱っていません。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究5件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 通院で窓口支払いがある421自治体、222自治体が6都道府県に集中子ども医療費助成の自己負担を全国1,741市区町村で集計しました。通院で「窓口で支払いあり」は421自治体で、半数超が6都道府県に集まっています。通院と入院の違いや候補地の確認順序を紹介します。
- 子ども医療費助成で受診が増えることと、子どもが健康になることは別の問い子ども医療費の助成が広がったとき、受診、受診の中身、入院や健康、受診控え、親の負担について日本の研究が何を報告しているかを、研究ごとの対象と限界とあわせて整理します。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。