観測型FAQ研究
子どもの小学校入学の前後で、母親の就業が変わると報告されていますか?
- 回答の要約
- 日本の研究2件(同じ著者)が、小学校入学時の母親の就業の低下を報告しています。1995〜2010年の全国調査では入学とともに母親の就労率がおおむね10%下がり、常勤雇用と短期間雇用で目立ち、自営業では観察されませんでした。もう1件は、第1子が未就学時に保育所を利用していた母親で、第1子の入学時に核家族の母親の就業率が三世代同居より10.9ポイント下がったと報告しています。どちらも近年の状況や、原因が学童保育の不足かどうかは示していません。
保育所を利用していた母親では、第1子の入学時に核家族の就業率が三世代同居より10.9ポイント下がりました
「消費生活に関するパネル調査」で、第1子が未就学時に保育所を利用していた母親を追った研究は、三世代同居世帯と核家族世帯を比べ、祖父母による保育の有無の違いをみました。第1子の小学校入学の時点で、核家族世帯の母親の就業率は三世代同居世帯に比べて10.9ポイント下がり、1日の有償労働は約30分減って、家事・育児の時間が同じだけ増えたと報告しています。
1995〜2010年の全国調査では、入学とともに母親の就労率がおおむね10%下がりました
同じ著者が1995〜2010年の『国民生活基礎調査』を使い、子どもの月齢で小学校入学の直前と直後を比べた研究は、入学とともに母親の就労率がおおむね10%下がったと報告しています。低下は常勤雇用と短期間雇用の母親で目立ち、自営業の母親では観察されませんでした。幼稚園を利用していた世帯も含む平均です。
下がった理由が学童保育の不足かどうかは、直接分けた分析ではありません
パネル調査の研究は世帯の形の違いを、全国調査の研究は入学の直前と直後の違いを比べています。前者は学童保育の定員や待機児童数を直接測っておらず、後者も低下の理由が放課後保育の不足かどうかを直接分けた推定ではありません。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 小学1年生の母親の壁:日本における放課後保育の利用可能性と母親の就業継続Reo Takaku(2017) | 「消費生活に関するパネル調査」のうち、第1子が未就学時に保育所を利用していた母親(核家族世帯と三世代同居世帯を比較) | 第1子入学時の核家族と三世代同居の母親の就業率の差 |
| 小学校一年生の壁と日本の放課後保育高久玲音(2019) | 1995〜2010年の『国民生活基礎調査』の子どもを持つ世帯(子どもの月齢で小学校入学の前後を比べる回帰不連続デザイン) | 1995〜2010年の全国調査で入学前後の就労率を比較 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 2つの研究は同じ著者によるもので、独立した研究者による追試ではありません。パネル調査の研究は、第1子が未就学時に保育所を利用していた母親について祖父母による保育の有無を比べた推定で、学童保育の定員や待機児童数は測っておらず、調査期間は抄録に書かれていません。全国調査の研究は2010年までの平均で、幼稚園を利用していた世帯を含み、労働時間は分析していません。近年の状況や父親の就業の変化は扱っていません。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究2件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 学童保育と保育所の待機児童は別の数字、引っ越し前に見る3つの視点学童保育の待機児童は保育所の待機児童と別の調査の数字です。引っ越し先を比べる前に確認したい3つの視点を、こども家庭庁の調査データから整理して紹介します。
- 学童保育の待機児童・開所時間と「小1の壁」、研究で分かっている範囲学年別の待機児童と終了時刻は国の集計で読みます。小学校入学時の母親の就業、学童保育の利用しやすさと就業、子どもの発達は、それぞれ別の研究の範囲として分けて読みます。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。