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観測型FAQ研究

日本の給付型奨学金や授業料減免を受けて進学した人は、卒業後の就業や所得が変わると研究で示されていますか?

回答の要約
日本の給付型奨学金・授業料減免については、今回確認した研究からは示されていません。新制度の研究が扱うのは進学したかと進学後に給付を受けたかまでで、卒業直後の収入を比べた日本の研究は主に貸与型が対象です。米国では、テキサス州の公立4年制大学の初年次の低所得の学生で、連邦の給付額の境界による追加給付の資格がその後の所得を増やしたという報告があります。

国の縦断調査の分析は、進学と進学後の奨学金の受給までです

新制度の開始直前に高校を卒業した1月生まれと、開始年度に進学した7月生まれを比べた分析は、世帯年収210万〜370万円の層で7月生まれの高等教育進学率が高かったと報告しています。210万円以下の層では有意な差はみられませんでした。進学後の給付型奨学金の受給率は、両層の7月生まれで5割前後でした。分析は進学と進学後の受給までで、在学継続や卒業後の就業は扱っていません。

在学中の支出と勉強時間の研究では、給付と貸与の受給者に大きな差はみられませんでした

日本学生支援機構の学生生活調査(2014・2016・2018・2020年度)の個票データで、似た属性の学生どうしを比べた研究は、奨学金を受けている学生は修学費の支出や勉強時間が多い傾向があり、給付型奨学金の受給者も同じ傾向で、貸与型の受給者との大きな差は観察されなかったと報告しています。新制度の効果を見た研究ではなく、在学中の比較で、卒業後は扱っていません。

貸与型奨学金の研究では、同じ大卒者どうしで収入の差はみられませんでした

主に貸与型奨学金を対象にした研究は、奨学金を得て大学を卒業した人は高卒者より卒業直後の収入や正規就業率が高い一方、同じ大卒者どうしでは差がみられなかったと報告しています。2017年以降の給付型奨学金の受給者は含みません。

米国テキサス州の公立4年制大学の初年次の低所得の学生では、給付額の境界による追加給付の資格がその後の所得を増やしたと報告されています

米国テキサス州の公立大学の行政記録で、低所得の学生について連邦の給付型奨学金の額が変わる境界を比べた研究は、4年制大学の初年次の学生で、追加の給付を受けられる資格が学位取得とその後の所得を増やしたと報告しています。日本の制度で同じことが起きるかは、この研究からは分かりません。

この回答が参照した研究

研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。

研究 標本 この問いでの用い方
21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)特別報告文部科学省、浜銀総合研究所(2023) 2001年に生まれた子どもを追う全国の縦断調査のうち、修学支援新制度の開始直前に高校を卒業した1月生まれと、開始年度に進学した7月生まれの比較(文部科学省の調査研究として浜銀総合研究所が分析) 新制度の分析は進学と進学後の受給までで、卒業後は扱っていない
奨学金受給が生活時間、収入、支出に与える影響大澤 銀河(2025) 日本学生支援機構の学生生活調査(2014・2016・2018・2020年度)の個票データ 給付型受給者の在学中の支出・勉強時間を扱い、卒業後は扱っていない
奨学金は大学への進学、大学卒業後の収入拡大・正規雇用の促進に寄与しているのか萩原 里紗、深堀 遼太郎(2016) 大学生の生活実態調査、2005〜2011年の高校生の進路追跡調査、2014年度の教育費負担の実態調査など、既存の全国調査の個票データ 貸与型中心で、同じ大卒者どうしでは卒業直後の収入差がみられない
給付型奨学金が卒業・所得・社会的な便益に与える効果Jeffrey T. Denning、Benjamin M. Marx、Lesley J. Turner(2019) 米国テキサス州の公立大学の行政記録と、低所得の学生で連邦の給付型奨学金の額が変わる境界の比較 米国テキサス州の4年制大学の初年次の低所得の学生で、追加給付の資格とその後の所得の増加を報告

この回答で分からないこと

限界
日本の給付型奨学金・授業料減免について、受給者と同じ条件の非受給者を卒業後まで追った比較は、今回の確認範囲に含まれていません。卒業後の収入を比べた日本の研究は主に貸与型が対象で、卒業直後の時点に限られます。新制度の分析は生まれ月による1学年ずつの対比で、世帯年収は調査の回答による目安のため実際の支援対象とは一致しません。米国の結果は、テキサス州の公立4年制大学の初年次の低所得の学生で、連邦の給付額の境界付近の資格についてのもので、日本の制度へそのまま当てはめられません。
出典の層
一次資料を確認した研究4件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。