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観測型FAQ研究

日本で、引っ越しや転校が子どもの学力や心の健康に長く影響するかは、研究で示されていますか?

回答の要約
日本の子どもについては、今回確認した研究からは示されていません。日本で確認できたのは、1980年代に転校した小学生40人の転校後3か月を追った調査で、学力や長期の心の健康は測っていません。海外では、英国の1地域の出生集団で関連の多くが子どもどうしの違いで説明されつつ、転居の後に心の健康が悪くなる関連が一部残り、オーストラリアの出生集団では関連が全体に小さく、転居の程度や時期で向きが異なりました。

日本の調査は、転校後3か月の学校へのなじみ方を見ています

小学3〜6年生の転校児童40人を、前年度の転校児童、もとから在籍する児童と比べた1980年代の調査は、転校児童が最初の2回の調査で級友や教師との関わりの得点が低かったと報告しています。学級に受け入れられているという感じ方や学習への興味では差がありませんでした。測ったのは転校後3か月の学校生活で、学力や長期の心の健康ではありません。

同じ著者の調査では、受け入れ学級のクラス替えの有無で差が分かれました

同じ著者が、4月に転校した小学3〜6年生の転校児童40人の交友関係を測った調査は、クラス替えをしなかった5・6年生の学級では、4月の時点で転校児童の級友との心理的な距離の指標がもとからの児童より低く、クラス替えをした5・6年生の学級と、3・4年生の学級では、この差は見られなかったと報告しています。別の標本による追試ではありません。

海外の出生集団を追った研究では、関連の向きが一様ではありません

英国の1地域の出生コホートで4・7・10・12歳に情緒・行動の問題を測った研究は、転居した子としなかった子の関連の多くが子どもどうしのもともとの違いで説明された一方、同じ子どもの中では転居の後に心の健康が悪くなる関連の一部が残ったと報告しています。3・5・7年生の全国学力調査を使ったオーストラリアの縦断研究は、転居と成績の関連は全体に小さく、転居が多い子どもの成績の低さは家庭と住まいの状況を考慮すると消え、中程度の転居、とくに別の地域への転居は成績の向上と関連し、就学前後の転居は3年生の成績の低さと関連したものの5・7年生では関連しなかったと報告しています。いずれも海外の学校制度と転居の事情の下での結果で、日本の子どもに同じ関連があるかは確かめていません。

この回答が参照した研究

研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。

研究 標本 この問いでの用い方
転校児童の新しい学校への適応過程小泉令三(1986) 小学3〜6年生の転校児童40人、前年度の転校児童65人、もとから在籍する児童120人(転校後3か月間に4回の質問紙調査) 日本の転校児童40人の転校後3か月の適応を測った調査
受け入れ学級のクラス替えが転校児童の交友関係に与える影響小泉令三(1987) 4月に転校した小学3〜6年生の転校児童40人と学級の児童(3か月間に4回の測定) 同じ著者・同じ規模の標本で交友関係を測った調査
転居などの大きな出来事は心の健康にどう影響するか:英国の子どもの縦断分析Tim Morris、David Manley、Kate Northstone、Clive E. Sabel(2017) 英国の地域出生コホートの子どもについて、4・7・10・12歳で測った情緒・行動の問題の質問票(延べ18,699回分の観察) 英国の1地域の出生集団で、関連の多くは子どもどうしの違いで説明され一部が残った例
オーストラリアの子どもの転居と学業成績:縦断分析Sergi Vidal、Janeen Baxter(2018) 1990年代後半に生まれた子ども3,481人の全国縦断調査と、3・5・7年生の全国学力調査の得点 オーストラリアの出生集団で、家庭と住まいを考慮すると転居の多さとの関連が消えた例

この回答で分からないこと

限界
ここでの「示されていない」は、今回確認した研究の範囲での判断で、日本に研究が存在しないことを確かめたものではありません。日本の2本は同じ著者による1980年代の40人の調査で、転校後3か月の学校生活と交友関係だけを測り、学力や長期の心の健康は測っておらず、別の標本による追試でも、転校しなかった場合と比べた因果効果でもありません。英国の研究は1地域、オーストラリアの研究は1つの出生集団の観察データで、測っていない要因を完全には除けません。海外の結果を日本の子どもへそのまま当てはめることはできません。
出典の層
一次資料を確認した研究4件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。