観測型FAQ研究

待機児童が少ない自治体へ引っ越せば、共働きを続けやすくなると研究で示されていますか?

回答の要約
今回確認した研究からは示されていません。保育供給や入園が就業へ及ぼす効果と、自治体を選んで転居することの効果は別です。

1990〜2010年の都道府県パネルは転居世帯を追っていません

国勢調査に基づく都道府県別パネル(1990〜2010年)を使った研究は、認可保育の供給拡大と母親の就業率の関係を見ています。都道府県ごとの固有の差を考慮すると、供給拡大と就業率上昇の関連は確認されませんでした。待機児童数を見て転居した世帯と、転居しなかった同条件の世帯を比べた分析ではありません。

2015〜2017年の市区町村分析も転居の効果ではありません

未就学児の母親を含む全国調査と市区町村データ(2015〜2017年)を使った研究は、保育サービス定員率の上昇と母親の就業確率の関係を報告しています。制度拡大の速さの地域差を使った平均であり、希望園への入園や、転居による個人の変化を直接検証していません。

入園選考の境界は1自治体の申込者に限られます

匿名の都市自治体で認可保育所へ申し込んだ0・1歳児世帯(2016〜2017年を含む行政記録)を使った研究は、入園選考の境界付近で、認可保育所への入園が母親の就業と給与所得を増やしたと報告しています。1自治体の申込者、とくに育休から元の仕事へ戻る母親に近い範囲の結果であり、全世帯や転居者へ一般化できる結果ではありません。

居住地を結んだ追跡も転居の選択を分けていません

第1子出産後の母親の就業追跡と、居住市・最寄駅に結び付けた2010年前後の保育施設行政データを使った研究は、認可施設が不足する地域で、認可外等の供給増加と早い就業復帰の関連を報告しています。居住地をデータに結んでいますが、転居した効果を取り出した研究ではありません。

この回答が参照した研究

研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。

研究 標本 この問いでの用い方
保育の利用可能性、世帯構造、および母親の就業Yukiko Asai、Ryo Kambayashi、Shintaro Yamaguchi(2015) 日本の都道府県別パネル(国勢調査、1990〜2010年) 地域差を統制すると単純相関の解釈が変わる例
保育の利用可能性と母親の就業:日本からの新たな証拠Chi Zhang、Shunsuke Managi(2021) 未就学児の母親を含む全国調査と市区町村データ(2015〜2017年) 転居ではなく市区町村別の供給拡大を用いた分析
幼児向けフォーマル保育へのアクセスと親の就業および所得Taiyo Fukai、Ayako Kondo(2024) 匿名の都市自治体で認可保育所へ申し込んだ0・1歳児世帯(2016〜2017年を含む行政記録) 1自治体の入園申込者における局所効果
保育が母親の就業に与える影響Miki Kohara、Mao Nakayama(2024) 第1子出産後の母親の就業追跡と、居住市・最寄駅に結び付けた2010年前後の保育施設行政データ 居住地を結合するが転居効果を識別した研究ではない

この回答で分からないこと

限界
転居世帯を対象にした直接の因果効果は確認しておらず、個別の入園可否も予測しません。就業意欲、所得、通勤、親族支援、子どもの年齢などは転居先と就業継続の両方に関係し得るため、待機児童数の少なさだけから転居効果を結論づけることはできません。
出典の層
一次資料を確認した研究4件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。