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論点別コラム学校外の学びの場と支援

フリースクールや心理的支援について、確かめられていることと、まだ比べられていないこと

フリースクールなど学校外の学びの場に「通うとその後どうなるか」を、通った人と通わなかった人で条件をそろえて比べた日本の研究は、今回の確認範囲では見つかりませんでした。一方、通い方や費用、不登校だった人のその後の進路、主に海外で行われた心理的支援の比較試験については報告があります。ここでは、それぞれが何を測り、何を測っていないかを分けて整理します。

「通い方と費用」「その後の進路」「支援の効果」は別の問いです

フリースクールに通う家庭の様子は、通っている家庭への調査で分かります。不登校だった人のその後は、追跡調査や経験者調査で集計されています。ある支援が効果を持つかどうかは、受けた人と受けなかった人を条件をそろえて比べる研究でないと確かめにくく、日本の学校外の学びの場では、その形の研究が今回確認できませんでした。

東京都の家庭調査では、月9日前後の通所と月4万円台の費用が報告されました

東京都教育委員会の調査(令和4年度・令和5年度)では、フリースクール等に通う都内公立小・中学校等の不登校の子どもが各月に通った割合は約88%、日数は月9日前後でした。在籍校へ各月に通った割合は約31%(月6日弱)です。授業料・施設使用料などの月あたりの費用は平均45,817円(令和4年度)と43,136円(令和5年度)で、約9割の保護者が家計の負担を感じると答えました。回答した家庭は公募に応じて調査協力金を受けていたため、都内の利用者全体とずれている可能性があります。

主に15〜19歳を受け入れる施設への調査では、費用と経済的理由での退会が報告されています

労働政策研究・研修機構が平成30年に、主に中学卒業後の15〜19歳を支援するフリースクール・サポート校等384施設へ行った調査(回答120施設、回収率約3割)では、月額の会費が1万円〜5万円未満の施設が5割程度で、過去5年以内に経済的理由で退会した利用者がいたと答えた施設は4割程度でした。卒業生の追跡調査は、実施している施設とそうでない施設に分かれていました。東京都の小・中学生の家庭調査とは、時期も対象の年齢も違います。

不登校だった人のその後は集計されていますが、支援ごとの比較ではありません

平成18年度に中学3年で不登校だった人を追った文部科学省の調査では、本人アンケートに答えた1,604人(対象41,043人の一部で、偏りがあり得ます)では、高校進学率は85.1%、20歳時点で就学か就業をしている人は81.9%でした。18〜59歳の経験者調査(令和7年)では、人との関わりに苦労した経験と、成長した・視野が広がった経験の両方が半数を超えて挙がりました。フリースクール1施設の卒業生6名への聞き取りでは、卒業生が大学進学を施設での経験を肯定できる「成功」として意味づけていた一方、その意味づけが大学生活への過剰な適応や休学・退学の背景にもなっていたと報告されています。いずれも、通った人と通わなかった人を条件をそろえて比べる設計とは別のものです。

心理的支援の比較試験では、出席と不安で結果が分かれています

学校に行くことへの強い苦痛を伴う欠席がある子どもを対象にした2015年の系統的レビュー(8研究、435名、うち7研究が認知行動療法の変形)は、対照群より出席が改善した一方、不安の改善は統計的に有意でなかったと報告しました。8研究中5件は医療機関での実施で、多くの研究に偏りのおそれがあるため推定は慎重に扱う必要があるとしています。2025年のメタ分析は登校の困難を対象にした認知行動療法の研究15件をまとめましたが、対照群のある比較試験はそのうち4件で、対照群との比較では出席に効果が見られた一方、不安と抑うつへの効果は有意でありませんでした。研究間の違いや偏りのおそれ、測り方の不統一も挙げています。どちらも主に海外の研究で比較試験の数も少なく、日本の子どもやフリースクールのような学びの場に同じ結果が当てはまるかは分かりません。

日本の学校外の学びの場について、まだ測られていないことがあります

通った子どもと通わなかった子どもを、休みはじめの時期や状態、家庭の事情をそろえて比べ、その後の学び、心身の状態、進路を追った研究は、今回の確認範囲では見つかりませんでした。施設調査では費用の幅や卒業生の追跡の有無が施設によって分かれており、仮にそうした研究が出ても、1施設の結果が他の施設にも当てはまるかは、別に確かめる必要があります。

参照した研究の標本と報告

同じ論点を扱っていても、研究が調べた対象と報告の範囲は違います。標本と報告を並べて読みます。

研究 標本 報告 限界
フリースクール等に通う不登校児童・生徒支援調査研究事業 報告書東京都教育委員会、東京学芸大学(委託実施)(2024) 都内公立小・中学校等に在籍する不登校の児童生徒で、フリースクール等に通う子どもとその保護者。公募に応じ、調査協力金(令和4年度は月1万円、令和5年度は月2万円)を受けた家庭で、初回回答は令和4年度509組、令和5年度1,282組。月ごとの回答を12か月間集めた 各月に通った割合は、フリースクール等が約88%(月9日前後)、在籍校が約31%(月6日弱)、教育支援センターが約8%だった。フリースクール等の月あたりの費用(授業料・施設使用料など)は平均45,817円(令和4年度)と43,136円(令和5年度)、入会金は約4万円で、約9割の保護者が家計の負担を感じると答えた。子どもの希望進路は、中学生では定時制・通信制の高校が61.0%で最も多かった。 公募に応じて調査協力金を受けた東京都の家庭であり、フリースクール等に通う子ども全体の代表ではない。通わなかった子どもとの比較はなく、通所の効果を検証した調査ではない。
フリースクール・サポート校等における進路指導・キャリアガイダンスに関する調査結果労働政策研究・研修機構(2020) フリースクール・サポート校等384施設へ郵送した質問紙調査の回答120施設(回収率31.3%、平成30年4〜5月)。対象は主に中学卒業後の15〜19歳の生徒への支援 個別の学習(通信制高校の学習の支援など)は回答施設の9割以上で行われていた。施設の半数で1万円〜5万円未満の入会金が設定され、月額の会費も1万円〜5万円未満が5割程度で、過去5年以内に経済的理由で退会した利用者がいると答えた施設は4割程度だった。卒業生の追跡調査は、実施している施設とそうでない施設に分かれていた。 施設側の回答で、回収率は約3割。利用者本人の進路や生活を追った調査ではなく、施設を利用したことの効果は測っていない。
「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~文部科学省 不登校生徒に関する追跡調査研究会(2014) 平成18年度に中学3年に在籍し不登校として計上された41,043人が対象。在籍中学校への調査28,388人分、本人への無記名アンケート1,604人(平成24年1〜3月、20歳前後)、インタビュー379人 アンケートの回答者では、中学卒業後の高校進学率は85.1%、高校中退率は14.0%で、平成5年度の不登校生徒を追った前回調査(65.3%、37.9%)より高校進学率が高く中退率が低かった。20歳時点で就学か就業をしている人は81.9%だった。中学3年当時に受けていた支援は、学校の相談員が34.0%、教育支援センターが19.7%、フリースクールなどの民間施設が8.8%で、何も利用しなかったは22.5%だった。 本人アンケートの回答は対象者の一部で、回答した人に偏りがあり得る。不登校でなかった生徒との比較や、受けた支援の種類ごとにその後の進路を条件をそろえて比べた分析ではない。
「不登校経験者等を対象とする調査」~不登校・いじめ対策等の効果的な活用の推進に向けた調査研究報告書~有限責任監査法人トーマツ(文部科学省委託)(2025) 小・中学校で不登校を経験したと答えた18〜59歳。調査会社のパネルによるインターネット調査18,207人と、支援団体・自治体の協力によるオンライン調査321人(令和7年2〜3月)、ほかにインタビュー13人と支援団体4団体 本人が振り返った休みはじめのきっかけは、インターネット調査では友人との関係(いやがらせやいじめ)が47.5%で最も多く、オンライン調査では精神的不調が46.4%で最も多かった。不登校当時に相談した機関や人が「なし」の割合は、インターネット調査で51.1%、オンライン調査で20.2%だった。中学校卒業後について、人との関わりに苦労したという回答と、成長した・視野が広がったという回答がともに半数を超えた。 調査会社のパネルと支援団体経由の回答者で、不登校経験者全体の代表標本ではない。数十年前の経験を含む振り返りの回答であり、不登校を経験しなかった人や、支援を受けなかった人との条件をそろえた比較は行っていない。
フリースクールからの大学進学をめぐるジレンマ ―大学進学がもたらす光と影―藤村晃成(2018) 中国地方のNPO法人フリースクール1施設の卒業生6名へのインタビュー(2015年10月〜2017年3月)と施設でのフィールドワーク 卒業生は大学進学を、施設の経験を肯定できる「成功」として意味づけていた。一方で、その意味づけが大学生活への過剰な適応や、休学・退学といった困難の背景にもなっていたと報告している。 1施設の卒業生6名の語りを分析した質的研究で、進学率や就労状況を数量的に示すものではなく、他の施設や通わなかった人との比較もない。
学校に行くことへの強い不安や苦痛がある小中高生への心理社会的支援の系統的レビューBrandy R. Maynard、Kristen E. Brendel、Jeffery J. Bulanda、David Heyne、Aaron M. Thompson、Therese D. Pigott(2015) 2013年11月までの文献検索で選ばれた8研究(無作為化比較試験6件、準実験2件)、学校に行くことへの強い苦痛を伴う欠席がある子ども計435名。8研究中5件は医療機関での実施 心理社会的支援(8研究中7研究が認知行動療法の変形)は、対照群と比べて出席に統計的に有意な改善を示した(効果量 g = 0.54)。不安の改善は統計的に有意でなかった(g = 0.06)。多くの研究に偏りのおそれがあり、効果の推定は慎重に扱う必要があるとしている。 研究数が少なく、ほとんどが認知行動療法で、それ以外の支援の比較試験はほとんどない。日本の子どもや、フリースクール・教育支援センターのような学校外の学びの場を対象にした研究ではない。
登校の困難がある子どもへの認知行動療法の系統的レビューとメタ分析Sarah Jakobsen、Katrine B. Tølbøll、Mikael Thastum、Johanne J. Lomholt(2025) 1985〜2024年の文献から選んだ、登校の困難に焦点を当てた認知行動療法の研究15件(無作為化比較試験4件、対照群のない試験11件)、計932名の子ども 対照群と比べると、認知行動療法は出席に中程度の効果(g = 0.44)を示した一方、不安(g = −0.09)と抑うつ(g = −0.14)への効果は統計的に有意でなかった。研究間の違いや偏りのおそれ、測り方の不統一があり、さらなる比較試験が必要としている。 比較試験は4件と少なく、多くは対照群のない前後比較。認知行動療法以外の支援や、日本の子ども、学校外の学びの場を対象にした結果ではない。

一次資料と確認日は研究検証台帳の各ページに記載しています。

この論点に対応する問い

  1. フリースクールに通う不登校の子どもと家庭について、調査では通い方や費用について何が報告されていますか?

    東京都の調査で、都内の公立小・中学校等に在籍しフリースクール等に通う不登校の子どものうち、公募に応じた家庭では、各月にフリースクール等へ通った割合が約88%(月9日前後)、在籍校へは約31%でした。月の費用は平均4万円台で、約9割の保護者が家計の負担を感じると答えています。主に15〜19歳を受け入れる施設への平成30年の調査(回答120施設)では、過去5年以内に経済的理由で退会した利用者がいたと答えた施設が4割程度でした。

    研究

  2. フリースクールなど学校外の学びの場に通うと、その後の進学や就労が良くなると、比べた研究で示されていますか?

    今回確認した資料からは示されていません。不登校だった人のその後を追った国の調査や、経験者の振り返り、卒業生への聞き取りはありますが、通った人と通わなかった人を条件をそろえて比べ、通ったことの効果を取り出した日本の研究は確認できませんでした。

    研究

  3. 学校に行くことの困難や強い不安がある子どもへの心理的な支援について、研究をまとめた系統的レビューでは何が報告されていますか?

    主に海外の研究をまとめた2つの系統的レビューが、主に認知行動療法で、対照群より出席が改善したと報告していますが、どちらも研究の偏りのおそれを挙げています。一方、不安の改善はどちらでも統計的に有意ではなく、抑うつを調べた2025年のレビューでも有意ではありませんでした。比較試験の数は少なく、認知行動療法以外の支援はほとんど比べられておらず、日本の子どもを対象にした結果ではありません。

    研究

この整理で分からないこと

限界
通った人と通わなかった人を条件をそろえて比べた研究は、今回の確認範囲にありませんでした。東京都の家庭は公募に応じて調査協力金を受けた家庭で都内の利用者全体ではなく、施設調査は回収率約3割の主に15〜19歳向けの施設で、両者を同じ利用者の姿として重ねられません。経験者調査は経験者全体を代表しない数十年前を含む振り返り、卒業生への聞き取りは1施設6名の語りです。心理的支援の結果は主に海外の研究によるもので、日本の子どもやフリースクール等での効果を示すものではありません。この整理は、確認できた一次資料の範囲での報告をまとめたもので、個々の子どもや家庭がどの学びの場や支援を選ぶかを判定しません。施設の内容や費用、補助制度は、各施設と自治体の最新の案内で確かめてください。